(1)ドロクイ属2種:ドロクイとリュウキュウドロクイは、いずれも孵化後約7日で沖合底層から波打ち際に加入した。加入場所としては、砂浜海岸が選択されるが、成長に伴い体長15mmに達すると泥干潟へ移行した。すなわち、ドロクイ属にとっては、砂浜海岸と泥干潟が隣接する海岸にセットで存在することが必要であることが明らかとなった。沖縄島で進行している大規模な埋め立ての結果、従来、異なる場所で産卵していた両種が、同じ場所で産卵せざるを得なくなり、その結果自然交雑種が出現すると推定された。 (2)ヒメジ科15種:ヒメジ科魚類は、同所的に複数種が生息しているが、種毎に異なる形態的特徴(眼径・鬚)を持ち、それらの特徴により、採餌行動、採餌場所、採餌時間帯、餌生物が異なることが明らかとなった。すなわち、“食い分け”“棲み分け”“時間分け”併用することにより、サンゴ礁池内のマイクロハビタットを極めて上手く使い、複数種が同一環境に生息することを可能にしていることが分かった。 (3)持続的有効利用への提言:サンゴ礁池に出現する水産重要種は、仔稚魚の着底場所、摂餌場所、生息場所など生活史の様々な段階でマイクロハビタットを上手く利用することで共存していることが明らかとなった。逆にいうと、大規模な埋め立て工事などの人為的な影響により、生息環境が単純化すると、種間交雑や生産性の著しい低下を引き起こすことが示唆された。今後、埋め立て等の人為的環境改変の際には、単純に成魚の生息場所野有無を論じるのみでなく、成長段階や種間でのマイクロハビタットの利用方法を詳細に検討してその影響を評価する必要がある。
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