研究概要 |
1.種子発芽時に発現する遺伝子の探索 種子の発芽時や休眠時に発現する遺伝子を網羅的に解析した。それにより、種子発芽時に発現する遺伝子が87種類、種子休眠時に発現する遺伝子が91種類単離された。これらの遺伝子について定量的RT-PCR法による発現解析を行い、発芽前に発現が高いグループ、発芽初期に発現が高いグループ、発芽中期に発現が高いグループ、発芽後期以降に発現が高いグループに分類できた。各グループの代表的な3遺伝子を、それぞれの発芽段階を示す遺伝子マーカーとして設定できた。また、4遺伝子について遺伝子組換え体を作成して機能解析を行った。Osmotin様タンパク質をコードする遺伝子を組換えた大腸菌では、高塩濃度培地で増殖が確認された。また、RCI2B型膜タンパク質をコードする遺伝子を組換えたシロイヌナズナでは、乾燥耐性の上昇が確認された。このような遺伝子のはたらきで、アマモ種子は海水中でも発芽・成長できると考えられる。 2.種子発芽に影響する環境要因と植物ホルモンの解析 種子発芽とその後の成長における植物ホルモンの効果を解析した。その結果、種子発芽初期から中期の幼葉鞘の伸長にはアブシシン酸が抑制効果を、種子発芽後期の第一葉の伸長にはジベレリンが促進効果を示すことが明らかになった。一方、エチレンは種子発芽には効果を示さないことが確認された。 3.アマモ場造成での種子管理技術の開発 塩濃度を通常海水レベルに維持し、ポリエチレングリコール添加で浸透圧のみを高めた保存液を考案した。この保存液中でアマモ種子を保管(4℃)したところ、発芽は完全に抑制された。また、保管1, 3, 5, 9, 15, 17ヶ月後の種子の発芽能力は高いレベルに維持されていた。このように、効果的に発芽を防いで少なくとも17ヶ月間は保管できる高浸透圧保存液が提唱できた。
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