前年度までの結果から、ナマコの体腔球は大腸菌LPSに対して強い反応を示さないことがわかった。そこで、他の微生物由来因子として、ペプチドグリカン(PGA)、リポテイコ酸(LTA)、ザイモサンをもちいた。体腔液を採取後、等分し、これらの因子を濃度を変えて投与し、48時間培養後、体腔液上清と体腔球を回収した。 体腔液上清を二次元電気泳動し、スポットパターンを比較した。その結果、これらの刺激に対してスポットパターンに変化が見られたが、特にLTAに対する刺激後の変化が明瞭であった。 そこで、LTA刺激後に増加したスポットを同定するため、ナマコ10個体から体腔液を採取し、LTAで刺激、体腔液上清を回収した。二次元電気泳動後、PVDF膜に転写、LTA刺激によって増加した3つのスポットをプロテインシーケンサに供した。 その結果、1つのスポットでN末端アミノ酸配列を得ることができた。BLAST検索の結果、ウニの生体防御関連タンパク質との類似性が見られた。他の2つのスポットについては、配列が得られなかった。 また、タンパク質同定後の産生細胞解明のための基礎データを得るために、体腔球の観察も行った。レクチンキットを用いた染色、および貪食作用を観察した結果、これまでの報告と異なる知見を得た。
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