研究概要 |
魚類病原細菌の一部は細胞同士のコミュニケーションとしてクォラムセンシング機構を利用することが知られている。グラム陰性菌では,オートインデューサーとしてN-アシルホモセリンラクトン(AHL)という化学物質を使うことが多い。そこで,本研究では,我が国の内水面漁業において重要な魚種であるアユおよびワカサギの腸内細菌のAHL生産能を調査することを目的とした。 養殖ワカサギの腸内容物,飼育水,配合飼料の細菌叢を調べたところ,腸内容物からは8属17種が検出され,Aeromonas属やLactococcus lactisが優占した。AHL生産菌はいずれもAeromonas属であり,腸管内容物に1.7×10^5~2.0×10^7 CFU/gの密度で存在した。一方、養殖アユの腸内容物,飼育水および配合飼料から分離した従属栄養細菌についてもAHL生産能を調べたところ,配合飼料からは検出されなかったものの,飼育水からは1.1×10^4 CFU/ml,腸管内容物からは2.8×10^6~2.8×10^8 CFU/gのAHL生産菌が検出された。また偏性嫌気性細菌はいずれもAHLを生産しなかった。AHL生産菌30株は,Aeromonas veronii(25株),A.popoffii(3),A.media(1)およびChromobacterium aquaticum(1)に分類された。以上の結果から,アユやワカサギの腸管に多いAeromonas属細菌の多くはAHLを生産することから,日和見感染症の発症にクォラムセンシング機構が関与していることが示唆された。さらに、これらの細菌が生産するN-アシルホモセリンラクトンを分解する細菌の検出方法について検討し、二重寒天法の変法が有効であることが判明した。
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