1)魚類病原細菌の一部はクォラムセンシング機構を用いて細胞同士のコミュニケーションを行うことが知られており、魚類腸管の優占菌であるAeromonas属などでは,介在物質(オートインデューサー)としてN-アシルホモセリンラクトン(AHL)を使うことが多い。そこで,本年度はキンギョの腸内細菌などについてAHL生産能やAHL分解能などについて調査をした。その結果、AHL生産菌の大部分はAeromonas属細菌であり、本物質を偏性嫌気性細菌は生産しなかった。また、AHL分解細菌としてはShewanella属細菌が主なものであった。今後は、AHL分解能の性質について調べ、プロバイオティクスとしての有効性を検証する予定である。 2)海産魚類の日和見感染菌の代表であるVibrio科細菌に特異的なプライマーを用いた定量法の有効性について検証した。その結果、①本プライマーを用いたPCR法を用いてクサフグ、トラフグおよびヒラメの腸内容物から構築したクローンライブラリー全310クローンがVibrio科細菌であることから、本プライマーは主にVibrio科細菌の16S rDNAの一部を増幅していることが判明した。②Vibrio科の23菌株のみでDNAが増幅したのに対し、Vibrio科以外の89菌株では増幅が認められなかった。 ③本プライマーを用いたリアルタイムPCR法によるVibrio科細菌の定量では、Vibrio科細菌数は沿岸魚類腸管内の全菌数の0.0001~50.1%を占めたことから、個体によって大きく変動することが判明した。本研究で開発した定量PCR法によってVibrio科細菌の迅速定量が可能となったことから、魚類の飼育環境とVibrio科細菌の関連性について今後検討する予定である。
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