研究概要 |
疾病や組織損傷・ストレスによる免疫系の活性化が内分泌系にどのような影響を与え、さらには魚類の生活史にどの様な影響をもたらすのか、スモルト化という生活史のターニングポイントを持つサケ科魚類を材料として、in vitro・in vivoの両面から明らかにすることを目的とする。本年度は培養下での免疫系から内分泌系への影響を解析するために必要な技術を確立するため、刺激効果の精度・再現性が高いと予想されるリポ多糖を用い、投与量・投与期間など実験条件について検討し、次年度以降計画している生体下でのこれらの内分泌因子の発現動態の解析と、さらに培養系を用いたサイトカインの投与実験についての基礎となるデータを蓄積した。培養下のニジマス白血球にリポ多糖とコルチゾルを投与し、細胞増殖に及ぼす影響を時間を追って解析したところ、リポ多糖による促進、コルチゾルによる抑制それぞれの作用には時間差があり、同時投与では互いに打ち消しあう拮抗作用が見られた。また、白血球で発現しているコルチゾル受容体遺伝子のmRNA量について、リアルタイムPCRを用いて測定したところ、増殖作用の変動に対応すると見られる、時間経過に伴う有意な増減が観察された。併せて、ニジマスのコルチゾル受容体に特異的な抗体の作成を試み、ウェスタンブロット法による半定量測定系確立の準備を開始した。次年度以降の解析では、in vitro, in vivo共に時間経過を考慮する必要がある。
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