研究課題
疾病や組織損傷・ストレスによる免疫系の活性化が内分泌系にどのような影響を与え、さらには魚類の生活史にどの様な影響をもたらすのか、スモルト化という生活史のターニングポイントを持つサケ科魚類を材料として、in vitro・in vivoの両面から明らかにすることを目的とする。本年度は生体下での免疫機能の状態が、免疫系から直接、または内分泌系を介して間接的にどの様な影響を及ぼすか、これまでに確立した培養系を用い、時間経過を考慮しながら解析を進めた。培養下のニジマス白血球へのリポ多糖の投与は、炎症性サイトカインであるIL-1の発現量を24時間で上昇させる一方、コルチゾル受容体の発現に対しては、48時間で上昇効果が確認された。コルチゾルの投与は当然のことながらその受容体の発現を24時間で上昇させる一方、IL-1に対しては48時間でも効果が見られなかった。そこで、コルチゾル分泌の昂進と免疫抑制が起こる、水位低下によるストレスを負荷したニジマスから得た白血球に対して同様の実験を行い、48時間後の反応を見たところ、IL-1投与による効果はストレスを負荷しなかった場合と同様であったが、コルチゾル投与では、その受容体の発現が上昇するという反応が見られなくなっていた。すなわち、ストレスを受けた個体では、免疫系の反応は変わらないが、内分泌系の反応が出なくなっており、ストレスへの"慣れ"を、分子レベルで捕らえることができたと言うことができる。
1: 当初の計画以上に進展している
計画通りに、in vitro・in vivo双方の手法の特徴を活かしたことにより、ストレスに起因した疾病の回避という実用的な方向へも波及しうる成果を得ることができた。
これまで研究に用いたニジマスの、同種ながらスモルト化・降海特性をもつ系統であるスチールヘッドトラウトを用い、生体下でのリポ多糖・コルチゾルの投与が及ぼす影響について解析を進める。
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Comparative Biochemistry and Physiology Part C
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