甲殻類では、眼柄内神経節からペプチドホルモンの卵黄形成抑制ホルモンが分泌されて卵形成の調節に働くと考えられているが、その作用機構には不明な点が多い。本研究課題では、クルマエビの卵黄形成抑制ホルモンの血中量の変動を明らかにするとともに、ホルモン投与と除去の影響を調べることにより、卵黄形成抑制ホルモンの作用機構を明らかにすることにしている。22年度は、ホルモン測定法の開発とRNA干渉技術によるホルモン合成抑制条件の検討を行った。 ホルモン測定のサンプル前処理として、有機溶媒抽出と固相カートリッジ抽出、熱水抽出を比較検討した。その結果、有機溶媒抽出法が最も安定して抽出できることがわかった。この方法を用いることで、多数の検体を効率的に前処理できるようになった。この前処理法とクルマエビの眼柄ペプチドホルモンに対する抗体を利用して血中量を測定することが可能になった。 卵黄形成抑制ホルモンの合成抑制を行うために、RNA干渉技術を利用してホルモンに相同な二本鎖RNAを稚エビに投与したところ、2週間後でもホルモンの遺伝子発現を抑制していることがわかった。次に、亜成体雌エビに二本鎖RNAを投与して卵巣発達に対する影響を調べたが、明瞭な変化は見られなかった。亜成体エビでは合成抑制が充分に働かなかった可能性が考えられる。 以上のように、22年度はホルモン測定法の改良・開発とRNA干渉技術によるホルモン合成抑制条件の検討を行った。ホルモンの作用解明に向けて、必要な基礎知見を得ることができた。
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