研究概要 |
【研究の背景と目的】 これまでに私は,病原ウイルスに感染し生き残ったクルマエビが再感染に対して抵抗性を示すとともに,血リンパ液中にウイルス感染防御因子が出現する凶・わゆる獲得免疫に類似した現象を利用してWSSVワクチンの開発を行ってきた。すなわち、WSSVの構造タンパク質の組換えタンパク質rVP26およびrVP28を投与することで,WSSVに対する抵抗性を誘導するものである。これらの開発過程で,本免疫現象には,特異性と免疫記憶が存在を示唆するデーターを得た。そこで,これらの機序の解明が,ワクチン開発を進める上で必須と考え,本現象の機序解明を目的に,ワクチン投与エビの血リンパ液中に誘導されるウイルス不活化因子の特定ならびに定量的検出系の確立を計画した。 【今年度の計画概要】 ・昨年度に続き,免疫様現象を誘導したクルマエビの血リンパ液を回収する。 ・回収した血リンパ液から,免疫抗原と反応する因子を回収する手法を見いだす。 ・さらに,回収が出来た場合,当該物質を抗原として家兎あるいはマウスから抗血清を回収し,抗血清を用いて直接的に本現象を発現したクルマエビ血リンパ液中から防御因子の検出を試みる。 【今年度の成果】 クルマエビにrVP26,28粗精製物,ウサギ赤血球等を投与し,血リンパ液を回収した。二次元電気泳動解析の結果,rVP28投与個体の血リンパ液から,特異的に発現したと考えられるスポットが確認され,3スポットについてN末端側10残基のアミノ酸シークエンスを行ったもののタンパク質の同定には至らなかった。ウサギ赤血球を利用して当該因子を回収し,同一のウサギに免疫し,抗血清を得た。得られた抗血清を用いて血リンパ液中の反応因子の検出条件の検討を行ったが,複数のクルマエビ血リンパ液因子に対して反応し,ウサギ赤血球に反応したクルマエビ血リンパ液因子に特異的に反応する抗血清を得るには至らなかった。龍
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今後の研究の推進方策 |
血リンパ液から当該因子を単独で分離する手法の確立が大変困難であるが,二次元電気泳動解析により因子と考えられるタンパク質を回収できたことから,二次元電気泳動による因子の回収を重ねて行い,家兎あるいはマウスに免疫可能な抗原量を確保して,抗血清を得ることを検討する。あるいは,アミノ酸解析により得られたシーケンス情報を利用して,血リンパ液中から当該タンパク質の遺伝子をPCRによって検出しシーケンスすると共に,組換えタンパク質に対する抗血清を得ることで,血リンパ液中の当該タンパク質の検出を試みることを検討する。
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