先ず、これまでに最も活性が高いことが確かめられている、2種の ウナギ生殖腺刺激ホルモン(GTH:FSH-hCTPおよびLH-hCTP)を、未熟雌ウナギに週1回、毎週投与した。期間中に適宜採血を行うと共に、卵黄形成中期および成熟期で卵巣をサンプリングし、生殖腺体指数(GSI)を算定した。卵巣の一部に関しては、リンゲル中にて最も発達した(先頭群)卵濾胞のみを分離した。卵形成誘導ステロイド(E2)の血中変動を調べるとともに、先頭群卵濾胞に関しては、FSH受容体(FSHR)、LH受容体(LHR)およびE2産生酵素であるCYP19a1のmRNA量を測定した。 その結果、FSH-hCTPでは8回の投与で成熟期に達するのに対し、LH-hCTPでは5回程度の投与で、同ステージに達した。GSIに関しては、両群共に卵黄形成中期では10程度の値を示し、成熟期で急増したが、FSH-hCTP群で約45であったのに対し、LH-hCTP群では約30と有意に低値を示した。血中E2量は、処理前は150pg/ml程度だったが、両GTH処理群ともに、成熟の進行に伴い増加し、成熟期には4ng/ml程度に達した。先頭群卵濾胞におけるFSHR遺伝子の発現は卵黄形成中期でピークに達した後、成熟期で減少したのに対し、LHR遺伝子の発現は成熟に伴い高まり成熟期で最高値を示したものの、両GTH処理群の間に有意差は認められなかった。一方、CYP19a mRNA量は、両処理群共に卵黄形成中期で増加した後、成熟期で急減したが、卵黄形成中期ではLH-hCTP群でFSH-hCTP群に比べ約7倍の高値を示した。 以上の結果から、FSH-hCTP、LH-hCTP共に卵巣の発達を促すことが明らかとなったが、GSIやCYP19a遺伝子の発現等に顕著な相違が認められたことから、両GTHの機能に顕著な相違が認められることが明らかとなった。
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