研究課題
本研究では、リステリア菌Listeria monocytogenes(Lm)、その他の病原菌の感染性および病原性を抑制する因子(乳酸菌および成分)を水産食品中から探索し、水産食品の新たな機能性の解明と、食品衛生に資することを目的とし、in vitroおよびマウスを用いた実験を行った。平成22年度は、水産発酵食品からの、酸耐性・胆汁耐性乳酸菌のスクリーニングと、病原菌のヒト腸管上皮細胞Caco-2への付着および侵入に対する、選抜乳酸菌および海藻抽出物の影響を検討した。その結果選抜されたLeuconostoc mesenteroides 1RM3株とマコンブ付着部(ガニアシ)抽出物が、未分化および分化Caco-2細胞、また、マウス脾臓および肝臓へのリステリア菌およびサルモネラ菌(Salmonella Typhimurium)の侵入あるいは感染を抑制することを確認した。平成23年度にはこれらの免疫賦活作用と抗炎症作用についてCaco-2細胞およびマウスマクロファージRAW264.7細胞を用いて確認した。上記のうち、特に1RM3にリステリア菌の侵入・感染抑制、抗炎症、および免疫賦活の有用性が認められたため、本年度は硫酸デキストランNa(DSS)投与により誘発した腸炎(IBD)発症マウスに及ぼす1RM3の影響を調べた。本菌体を飲料水とともに摂取させることにより、血便や下痢などの症状が緩和され、組織学的にも改善が認められた。本研究の成果は、伝統的な日本の水産食品、食材のうち、海藻の多糖類および、なれずし中の乳酸菌が、食中毒菌の感染を抑制しうることを示唆している。今後も有効成分の分離、作用メカニズム、食べ合わせなども含め検討を続けたい。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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