研究課題
軟体動物アメフラシ卵から新たなガラクトース結合性レクチンを単離し、α-ガラクトシドGb3への結合性をフロンタルアフィニティークロマトグラフィーにより明らかにした。ウニ卵レクチン(SUEL)ファミリーに属しナマズ卵から得られたα-ガラクトシドGb3結合性レクチンと共に、本糖鎖を選択的に発現しているバーキットリンパ腫細胞に添加し、細胞増殖に対する影響を調べたところ、アメフラシ卵ではレクチンの添加量に従い細胞死が見られた。これに対しナマズ卵レクチンは十分量の添加にも関わらず、バーキットリンパ腫の細胞死は起こさず、一方、ビンクリスチンなど抗がん剤と併用すると、低濃度の抗がん剤による細胞死が見られた。これを詳細に解析すると、ナマズ卵レクチンは細胞膜上の多剤耐性トランスポータータンパク質であるMRP1分子の生合成を抑えていることが抗体とFACSを用いた解析により明らかになった。さらにそのmRNA発現レベルをRT-PCR法で測定すると、レクチン添加後24-48時間後に発現量の低下が見られ、α-ガラクトシド結合性を持つナマズ卵レクチンには、細胞膜表面のGb3スフィンゴ糖脂質と結合し、多剤耐性MRP1タンパク質をコードしているmRNAの発現を抑制する活性を有するレクチン-糖脂質結合による細胞機能制御経路のあることが判明した。これらの結果から、α-ガラクトシド結合性レクチンには糖鎖結合特異性が同じでも結合力や多量体性に依存し種々の異なる活性を有することが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
糖鎖結合性を同じくする2種類のα-ガラクトシド結合性レクチンにより、直接細胞死および遺伝子発現抑制に関する異なる細胞増殖制御様式を見出せ、これらを含む学術論文に公表できたことによる。
これまでに精製されている他の2種類のGb3結合性レクチンの添加に伴い、多剤耐性トランスポータータンパク質をコードするmRNAの発現に変化が起きるか否かを解析し、レクチン-糖鎖経路による遺伝子発現抑制が特異的か、一般的に存在するかを解明し、糖鎖生物学の新概念の創出に取り組む。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
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