研究概要 |
サンゴは褐虫藻と共生しており,多くのサンゴでは胚発生の段階で褐虫藻と共生開始する.したがって,この共生はサンゴの生存に必要不可欠である。ウスエダミドリイシAcropora tenuisから精製したレクチンActLは,N-アセチルグルコサミンおよびN-アセチルノイラミン酸に結合性を示した.A. tenuis幼生による褐虫藻の獲得は,ActL結合糖により阻害された.また,ActL抗体で処理した褐虫藻は,免疫前抗体で処理したものより,サンゴへの獲得数が有為に減少した。以上の結果より,ActLが褐虫藻の獲得のどこかの段階に関与する可能性がある。しかし,ActL自体を添加した海水中では,褐虫藻獲得数の有意な低下は見られなかった。ActLを含む寒天に褐虫藻を添加すると褐虫藻が集まる様子が観察されることから,ActLは,褐虫藻の誘引に関与していると推定される。A. tenuisにおけるActLの組織分布を抗体を用いて検討したところ,刺胞内部に多く存在していることが分かった。刺胞にレクチンが存在することは,シゲミカタトサカやAcropora millepora.で見いだされている。刺胞は内容物を放出して敵を攻撃する武器と考えられているが,サンゴの刺胞には粘着刺胞等いくつかの刺胞があり,その機能は明確ではない。しかしながら,刺胞の内容物は体外に放出されると考えられることから,このレクチンActLが体外に放出された後,褐虫藻を誘引している可能性がある。
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