研究概要 |
現在、サンゴの共生機構を明らかにするため、ウスエダミドリイシAcropora tenuisおよびトゲクサビライシCtenactis echinataを用いて研究を行っている. ウスエダミドリイシのレクチンActLは刺胞に分布することから、褐虫藻を誘引することにより,ポリプによる褐虫藻の獲得に関与していると推定される.そこで,褐虫藻の誘引活性側定系を用いて活性測定を行った.その結果、粗抽出液に褐虫藻の誘引活性が見られるばかりでなく、レクチン自体にも誘引活性が見られることがわかった.他のサンゴでもレクチンが刺胞に存在していることが報告されているから、これらのレクチンも自発的に発射された刺胞から放出されて褐虫藻の誘引に関与している可能性がある.一方、シゲミカタトサカレクチンSLL-2は,共生している褐虫藻の周辺に存在していた.これに,類似するレクチンがA.tenuisでも探索を行ったところ、二次元電気泳動では単一のスポットのみに抗体が反応した.この抗体は褐虫藻の取込みにも影響することから,共生の確立に重要な役割を持つと示唆される.トゲクサビライシC.echinataでは,レクチンCecLが誘引活性を示すこと、生体からCecLが放出されることを明らかにした.しかし,実際の海で褐虫藻の誘引にレクチンが関与するか検討するため,褐虫藻の影響を検討した.その結果、生体では,褐虫藻の誘引が個体により変化することがわかった.したがって、サンゴは,何らかの誘引物質を用いて褐虫藻を誘引していると推定される.これらにより,個々のサンゴと褐虫藻の共生に関わる因子が明らかにすることができる.それらのレクチンの機能を解明することにより,サンゴの共生における共通の分子機構を明らかにすることができる.
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今後の研究の推進方策 |
現在、機能については徐々に明らかにできており、研究の方向性も明確であり,このままつづけていけばまとまると考える.その一方、構造決定が十分に進んでいない.そこで,精製されたレクチン又は,二次元電気泳動で分離したタンパク質について,内部アミノ酸配列を決定したのち,そのcDNAのクローニングを行う.これにより,この研究で得られた成果を論文化する.
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