水産物の品質を評価するにあたり、アルデヒドを指標とした評価が有効である。アルデヒドの分析には様々な方法が用いられているが、本研究では蛍光標識によるアルデヒドの分析を試みた。なお、アルデヒドは水産物に多く含まれるn-3系脂肪酸の酸化によって生じる4-hydroxy-2-hexenal(HHE)に注目し、蛍光標識を行いHPLCによって分析する方法を開発した。さらにHPLCの分析条件を参考にし、薄層クロマトグラフィー(TLC)によるアルデヒドの可視化ならびに簡易的な分析方法を開発した。TLC法では順相シリカゲルによる分離が最適であり、CHD-アルデヒドの励起ならびに蛍光波長はそれぞれ、385 nm、450nmであることから、汎用的なUV照射ランプ(励起波長350 nm)の照射によって、450nmの蛍光が確認され、無色であるアルデヒド類を蛍光標識により検出することが可能となった。 本法を利用し市販7魚種の可食部(筋肉)中のアルデヒドを分析した結果、n-3系脂肪酸を多く含むサンマ、イワシ、サバにHHEが多く検出された。次に、コイに四塩化炭素を腹腔内に注射することにより人為的にストレスを与えた結果、ストレス指標として使用している脂質酸化物由来のヒドロキシ脂質の増加とともにHHEも有意に増加した。また、養殖現場で発生した病魚において、アルデヒドと病気の種類、魚種との関連性について検討した。なお、魚種ならびに病気の種類は、トラフグ(ピセリオ、トリコディナの寄生虫に感染)、ヒラメ(連鎖球菌に感染)、ブリ(黄疸菌に感染)、カンパチ(類結節症原因菌に感染)について分析を行った。この結果、魚種ならびに病気の種類に関係なくHHEが増加したことから、HHEは生魚のストレスを評価できることが示唆された。 本方法で開発された手法により、簡便に生魚のストレスを評価できることが明かとなった。
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