研究概要 |
農産物の知財に関する権利意識はようやく関係者の関心事となってきた。事例のピンクレディーシステムはりんごの新品種に関し育成者権と商標権を盾にクラブ制を用いて育成者の権益を保護しながら、販売価格の維持をはかることを目的にオーストラリアから始まった。しかし、我が国ではこれに関する本格的な研究は見られなかった。本研究では、このことに関する世界的な動向を調べると同時に我が国での取り組みの現状を調査し、考察を行った。 最終年度の本年度は、手つかずであったヨーロッパ、南米などを調査した。具体的には、①2012年9月イタリア/フランス(カーペンター・黄・荒川)、②2013年1月中国/広州・上海(調査者:カーペンター・黄)、③2013年3月 チリ(調査者:カーペンター)を調査することができた。 国内では、クラブ制にまでは至っていないが専用利用権を導入する岩手県八幡平市の安代りんどうの輸出の事例とりんご地帯の弘前中央青果株式会社の取り組みを明らかにした。専用利用権を持つ弘果は, 契約農家だけに栽培を与えるが, 結実りんごの販売市場を強制し, 権益を確保している。言わば品種育成者権は活用しているが, 商標権まで視野に入れた活用をしていない。それ故, 弘果の専用利用権はピンクレディーのクラブ制と比較すると生産段階に限ったクラブ制と言える。とはいえ、現在、専用利用権を有する「大紅栄」の販売が中国・台湾市場で順調に展開しており、知財を活用した事例としては注目される。農産物の知財マネジメント(品種経営)は世界で始まったばかりであり, 今後さまざまな取り組みが予想される。品種経営の時代の到来が予測される中で日本の対応が問われている.これらについて日本農業経済学会(2013年3月、東京農業大学)で一部を報告した。
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