本研究は若年層のニーズを踏まえた集落営農組織等の就農条件整備とジョブマッチングシステムのあり方を解明することを目的とする。本年度は主に就農者側のキャリア志向や職務満足度、経営者側の人材確保や労務管理方法に焦点を当て面接調査やアンケートによる事例研究を実施した。(1)都市部を中心に就農希望者が多く存在する一方、東北地域における農業法人では地元雇用に依存する傾向が非常に強く、それが人材確保を困難にしている一要因となっていた。優秀な人材確保のためには「農業人フェア」等の地域内外からのマッチングの場をさらに積極的に活用していくことが望まれるが、この場のみで採用の可否を判断するのではなく、現地説明会や研修などの機会を法人側で設け、就農希望者の意欲や適性を見極めるプロセスを経ることが重要である。(2)近年東北水田作においては急速な規模拡大とそれに伴い従業員数を大幅に増加させる経営が萌芽的に出現しつつある。そうした経営では従業員のモチベーションの低さや離職率の高さなどの労務管理上の問題に直面しているケースが多く確認された。実際に従業員側のキャリア志向を分析したところ、「職能・技術志向」(組織の中で自分の技術を向上させること重視)や「安定志向」が大半であり、管理職や経営者を志向する者は極めて少数であった。こうした問題を克服するためには、①従業員の努力が反映されるような就業条件づくり、②コミュニケーションの円滑化、③従業員の適性や経験に基づく職務配置、④職階制の導入によるキャリアパスと役割分担の明確化が有効であることを示した。
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