本年度は、ドイツについて環境支払い制度の実施状況を調査した。茨城県常総町東集落において我が国の環境支払いの実施について調査した。 ドイツにおいては、各州で様々な方法で環境支払い制度が実施されているが、バーデンビュルテンブルグ州においては、MEKAと呼ばれる制度が、数度の改訂を経ながら、農家の30%程度がその制度を利用するに到っている。項目は多岐にわたり、その説明書は一冊の小さな書物と言ってよいほどの量になる。制度はじめの頃は農家もまた行政も相当の時間的コストをかけたと考えられるが、現在では農家の側でも半日程度の負担で処理できるようになっている。時間の経過と経験につれて制度の実行が形式化されてきたし、また農家の制度の利用しやすさを重視してきた結果と考えられる。ある種の害虫を防ぐフェロモンの利用は、小さな道具を下げるだけの操作であるが、この制度がなければコスト面で実施しないと農家が言うのは、現在の環境支払い制度が、個々の農家の受入可能性に明確に焦点を合わせていることをうかがわせる。一方我が国の環境支払制度ともいうべき、農地水環境向上制度は、農家側(農家以外も含むが)共同的な作業を前提にした環境保全である。今年度から実施予定の個人的な作業に対する支払いの成果も見なければならないが、両制度の国際比較の視点は、農業経営という視点と、地域の中の農業という視点との対比のように現在のところ考えられる。
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