研究概要 |
本研究では,果樹作農家の意思決定場面を対象として,隔年結果や気象変動等の収量リスクだけではなく,価格リスクをも考慮した経営情報データベースとその利用システムの構築を課題とする. 具体的に,果樹作における隔年結果の発現程度は,個々の農家が採用する技術(機械・施設等のM技術,農薬・肥料等のBC技術だけではなく,摘果やせん定方法等のL技術の装備・習熟度合いも含む),傾斜度や土壌成分等の園地条件によって大きく異なる.また,共選や個人販売等を含む出荷先の多様性や市場との取引慣行等により農家が直面する収益の不確実性は,地域や経営体により多様である.つまり,このデータベースは,農家を取り巻く経営条件に対応した果樹作農家の意思決定を支援するシステムとしての応用可能性を目指すものである. また,複数リスクに直面した農家行動の主体均衡モデルを構築・推定し,長期的な意思決定に資する果樹作農家の意思決定支援モデル確立に資する基礎的知見の整理を課題とする. 平成23年度は,具体的なデータ収集(統計分析,アンケート調査,および,農家との対面調査)作業業を行った.具体的には,果樹の銘柄産地である静岡県三ヶ日町,和歌山県有田市,広島県瀬戸田町,愛媛県吉田町を対象として,市況リスク・収量リスクに関する統計データ整理し,協力機関との協働のもとで実態調査を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象となる果樹の銘柄産地における協力機関との協働は順調に進展している.しかし,年産の繁忙がはっきりしている果樹農業では,詳細な聞き取り調査を行う時期が限定されており,昨年度の実態調査において十分に収集できなかったデータについては,今年度の追加調査が不可欠となっているため.
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今後の研究の推進方策 |
政策的な支援を背景として,果樹作農家においても6次産業化が重要なキーワードとなっている.実態調査の対象農家においても,この動向は観察される.このとき,農産加工や直接販売が活発に行われていることにより,農家が直面するリスクも一層多様化していることが,研究の視点として再認識された.今年度は,生産に関するリスクだけではなく,加工・販売に関するリスクについても,実態調査の中で情報収集を重点的に行う必要がある.
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