本研究は、国際食料産業クラスター戦略によって、食料安全保障と持続可能な農業農村開発を実現するための理論的・実証的研究を行うものであり、最終年度に当たる平成24年度の研究実績は以下の通りである。 理論面においては、前年度までの研究成果を基礎に「協調優位戦略」を持続可能な農業・農村開発に応用し、「戦略的地域農業開発」の枠組みを構築した。 実証分析の面では、人的資源を含む地域資源の有効利用と管理および地域の魅力創造を通じたイノベーションの誘発効果を重視した分析を展開した。具体的には、1)テキストマイニングとSEMを組み合わせた混合マイニング手法を用いて農業の魅力形成要因を明らかにした。また、農業関連のコミュニティ・ビジネスの推進要因に関する実証分析を行った。2)農業の人的資源管理問題について、農業法人と従業員間の情報の非対称性が農業経営に与える影響(日本)、国営農業企業(農場)におけるHRMの特質(中国)を明らかにすると同時に、比較分析するための枠組みを構築した。3)最新のアジア国際産業連関表を利用し、農業部門と食品製造業部門を統合した食料産業を対象として、農業と食品製造業の工程間分業、農業部門の中間財の差別化タイプを識別可能な貿易指標を考案し、2000年から2005年における東アジアのフードシステムの変化は中国のWTO加盟と中国とASEAN間の自由貿易協定を背景とした工程間分業を伴って生じていることを明らかにした。4)3rd OECD Food Chain Network Meetingに参加することを通じて、食料政策研究の最新動向を把握し、グローバリゼーション下の食料政策のあり方を「協調優位戦略」による国際食料産業クラスター形成の視点から展望し、食品廃棄物(次回テーマ)を含む国際フードシステムを巡る諸問題に関して、財・資源の特殊性、主体間の相互作用の観点から論点整理を試みた。
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