2010年までの集落営農実態調査結果、2005年農業センサスなどの統計を整理し、集落営農組織の構造と機能に関する定量的分析を実施した。また2007~2009年度にかけて実施された水田経営所得安定対策による集落営農組織の形成・再編に関わる政策効果を統計的に検証した。さらに実証研究では、主として単一集落を基礎とする「ぐるみ型」の集落営農組織の現地調査を、広島県、京都府、岐阜県を対象として実施した。関係機関へのインタビュー、資料収集、組織役員へのインタビューなどを実施し、水田経営所得安定対策など直接支払い政策への取組、各階層の政策の受け止め、政策の評価・効果への意向などについて明確化した。 これらを通じて新たな政策体系のもとで、高齢・兼業など自己完結的な零細経営の対応、直接支払いによる助成金の帰属・活用方法、組織の中心的な担い手の形成のあり方などを明らかにし、集落特性・類型に応じた集落営農の動向・生産法人への移行の可能性・契機、選択される法人形態などを検討した。これらの研究を通じ、米別所得補償モデル事業という新たな直接支払制度により、主として中山間地域農業において、集落の領域を超える営農組織が形成に促進され、また関連する農業生産法人の経営基盤を強化し、水田の高度利用に結びついてきてところがあることを明らかにした。 研究の成果は、荒井聡「政策転換期における集落営農組織再編の新動向」(農林水産政策研究所[経営安定プロ]研究資料2010)、荒井聡他『集落営農の再編と水田農業の担い手』筑波書房2011などとして公刊している。
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