研究概要 |
1.わが国の柑橘産地の中で規模拡大が最も進んでいる静岡県三ヶ日地区において農協販売データに基づき,2001~09年の経営面積変動と経営規模別面積シェアおよび経営規模階層別の単位面積当たり販売額を分析した。この間,階層変動が進み,大規模農家が増加し,面積シェアでみると,果樹園面積2ha以上が6割以上を占め,4ha以上でも3割弱に達していることが明らかになった。また単位面積当たり販売額は規模階層間で有意な差は確認できなかった。 2.三ヶ日地区で規模階層別に抽出した農家調査を実施し,果樹園流動化と大規模経営形成の実態と階層間技術構造を分析した。2000年代以降の果樹園流動化では,既存園地の賃貸借が太宗を占めており,借地率が8割に達する借地型大規模果樹経営が出現していることが明らかになった。 3.三重県南部の熊野地域の柑橘産地においても農協データにより,経営面積規模別特徴と単位面積別販売金額について分析した。大規模経営では,柑橘品目内での複合化が進んでおり,多角化による労働配分の平準化が進んでいること,経営規模階層間で単位面積当たり販売金額に明確な格差が確認できないことなどが明らかになった。 4.青森県における最大規模階層である10ha規模のリンゴ作経営を調査した結果,リンゴ作大規模経営の成立条件として,(1)リンゴ作業のピークを形成する摘花・摘果作業および着色管理・収穫作業の省力化による年間旬別作業時間の平準化,(2)技能労働者である剪定労働力の育成・確保,(3)省力技術の導入に伴う外観品質の低下を補完しうる販売戦略、特に独自のチャネル戦略の構築という3点が重要であるという仮説的知見を得た。
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