研究概要 |
本研究は、戦時から戦後におけるドイツを中心とする中東欧地域の農業と農村社会の変化のありようを、(1)戦時についてはヴァルテ管区を中心になされたナチス農政の入植政策の実態の解明、(2)戦後西ドイツについては1950年代の土地整理事業を中心とする農業構造政策の実態解明、(3)中東欧については東独やポーランドを中心とする土地改革の実態解明、これらの3つの課題の解明を通して比較農業史的な視点から全体として明らかにすることである。 平成22年度は、まずは第一の課題である戦時入植政策の実態を明らかにするため、8月30日から9月13日に現地史料調査を行った。まず、ベルリンの連邦文書館において、ヴァルテ管区の「民族ドイツ人」農業入植に関する公文書を閲覧した。ただしその量が膨大であったため、今回は、リッツマンシュタット(現在はポーランドのウッジ市)に設置されていたナチ親衛隊の移民局関連の文書(R69 Einwanderer-zentralstelle Litzmannstadt,マイクロ・フィッシュ)を集中的に調べた。入植者全体に関する統計資料、「民族ドイツ人」集団の出身村落に関する史料、ドイツでの移住者収容所における入植者選別に関する史料、ポーランド農村における入植者の割り当てに関する史料を中心に、全部で61文書を閲覧し、重要部分を複写した。なお、このベルリンでの史料調査の後に、現地ポーランドのいくつかの場所を見て回った。さらに第三の課題に関わっては、これまでの研究をもとに、東ドイツの土地改革と集団化の社会史的な過程に関する著作(単著)を刊行することができた。また、本著作の準備過程では、上記の夏の調査の折にドイツ歴史博物館を訪れ、戦後東独農業に関する写真史料Bildarchivの調査を行った。
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