研究課題/領域番号 |
22580245
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 芳宏 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40283650)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 農業史 / 農業経済学 / ドイツ |
研究概要 |
(1)昨年度より着手した戦時ナチス占領ソ連地区における農業・食糧政策に関する現地史料調査を2012年8月29日から9月15日にかけて行った。まずフライブルク連邦文書館では『農業指導者』に関わる同時代雑誌(内部向け)と関連行政文書を閲覧し、次にベルリン連邦文書館ではコルホーズの再編に関する「新農業立法」政策に関する所蔵史料調査と関連史料の閲覧を行った。帰国後は、昨年度収集の史料もあわせ、関連史料の分類・整理と一部の読み込みを行った なお、昨年発表した「戦時ナチスのポーランド農民入植」に関する論文を読んだ読者から、札幌市に在住のヴォリニア・ドイツ人で、少年期に戦時ナチのポーランド農民入植の体験を有するOsker Tepper氏を紹介された。そこで2013年3月10日に、札幌市にてOsker Tepper氏に対する集中的な聞き取り調査を行った。 (2)2012年度は、これまでの研究成果を学会発表する機会が大変多く、その準備のために多くの力を注いだ。5月4日に、韓国春川で開催された日中韓国際農業史学会にて「「民族ドイツ人」移住農民の戦時経験」との演題で報告を行った。また11月10日には政治経済・経済史学会(慶応三田キャンパス)で「戦時ナチス・ドイツの併合地ポーランド農民入植政策」と題して自由論題報告を行った。2013年2月には、野田公夫編『農林資源開発の世紀』(京都大学学術出版会、2013年2月28日刊)の第6章において、前年までの成果である戦時ナチスの農業政策に関する論考を発表した。また2013年3月28日の日本農業史学会(東京農業大学)ではシンポジウム報告として「ナチス・ドイツ「帝国圏」における農業資源開発―戦時ドイツの食糧自給政策と「東方拡張Ostexpansion―」を行った。ほかに戦後東ドイツ農業史に関しては、いくつかの研究会で研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今期はこれまでの研究成果発表に力を注いだ。第一に戦時ナチ「民族ドイツ人」農民政策の実態に関する史的分析、第二に戦時ナチの東欧占領地域の農業・食糧政策の全体像をひとまず明らかにする研究については、ほぼ達成できた。また、戦後東ドイツ農業史については、同じ時期を対象とする日本の東ドイツ研究者と活発で濃密な研究交流を行うことができた。これにより自らの従来の研究成果のもつ意義や特徴を、これまでとは違う角度からみることができるようになった。 ただし新たに着手した戦時ナチ占領ソ連地区の農業・食糧政策に関しては、史料収集を行ったものの時間不足で史料の読み込みが思うようにはかどらなかった。また、戦時の南西ドイツ地域を中心とするナチ農業構造政策構想については関連研究文献の読み込みによって認識を深めることができたが、肝心の戦後西ドイツ農業構造政策の実態解明については、邦語雑誌文献の収集と読み込みはほぼ終えたものの、時間と予算の都合などから現地史料調査を今期は断念せざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本科研の最終年度であるが、これまでの研究成果については、主に昨年度に発表する機会を多数えた。従って今期は、まず第一に、現在進めている「ナチ占領ソ連地区の農業・食糧政策」についての実態分析をさらに進め、是非ともその成果を期間内に研究論文とするようにしたい。 着手が遅れている戦後西ドイツ農業構造政策史については、基本文献の収集のほか、コブレンツ連邦文書館などで関連行政史料の現地調査を行い、関連文献・刊行史料の収集と読み込みと合わせ、このテーマに関する見通しを得ることにしたい。 最後に、余裕があれば、戦後東ドイツについては, Mestlin村を事例として、戦後の模範的社会主義村落形成関する史料調査と分析を行いたい。
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