(1)引き続き、戦時ナチス占領ソ連地区に関する農業・食糧政策に関する文献調査と史料調査を行った。東部経済本部において占領政策の中心的地位にいたHans Nagel少将による同時代の総括的な報告書(「東部経済本部の歴史に関する論考」)を解読する一方、2014年3月17日から3月21日にかけてベルリンの連邦文書館において補充的な史料調査を行った。また『農業史研究』第48号(2014年3月刊)において単著論文「ナチス・ドイツ「帝国圏」における農業資源開発」を発表した。 (2)戦後西ドイツについては、戦後の大規模農業開発のプロジェクトとして、北部のシュレスビッヒ=ホルシュタイン州を対象とする「北部事業Programm Nord」に着目することとし、これに関わる基礎文献を収集し、一部の読解を進めた。東ドイツと同じく戦後農村の難民問題が深刻であり、その雇用対策としての意義があったこと、治水目的の干拓・堤防建設事業でありながら、圃場の団地化・大規模化など農業合理化、さらに上下水道の整備など農村生活環境全体の合理化が目指されたことなどが判明している。 (3)戦後の東ドイツについては、これまで行ってきた研究の要約が、現地の学術雑誌である『メクレンブルク年報』に"Sozial- und Agrargeschichte mecklenburgischer Doerfer 1945-1961. "(メクレンブルク村落の農業社会史)とのタイトルで掲載された。近年、戦後東欧の農業集団化に関する研究が急速に進展しており、東ドイツのみならずルーマニアをはじめとして、ポーランド、ハンガリーなどに関する農業集団化の研究成果が続々と発表され、新たな比較史研究が可能な状況になってきた。これらに関する英語文献を収集した。
|