本研究は、近年急増する中国大豆輸入問題に対して、需給双方の背景と原因を分析し、今後の変化動向を予測するとともに、政府の取るべき対策と国際大豆市場への影響を研究するものであるが、本年度は既存の統計・資料及び関係業者への聞き取り調査を通じて、次のようなことを明らかにした。 中国の大豆輸入は1995年に大豆輸入自由化してから急増し、かつての純輸出国は今、年間5千万トンも輸入する世界一の輸入国となった。その原因は輸入自由化と関税の大幅な引き下げの他、以下の4つの側面にあった。 (1) 経済発展と食生活改善に伴う国民の油脂食品と畜産物への需要急増である。 (2) 魚粉供給が限られ、他の家畜骨絵もBSEの問題で使えなくなる中、国民の畜産物への需要増加は直接に蛋白質飼料としての大豆ミールへの需要拡大に繋がる一方、油脂市場でも動物油脂は敬遠され始め、菜種油等他の植物油の国内生産が低迷状態にあるため、増加する油脂食品の需要ももっぱら供給拡大が可能なパーム油と大豆油に向けられた。結局、搾油用の大豆需要は急増し、今は国内消費用大豆の8割は搾油用に仕向けられている。 (3) 一方、国内の大豆生産は輸入大豆や他の作物との価格・収益性競争に苦戦し、2000年以降低迷状態にある。一部の地域で大豆作は既に急減し、その傾向はいずれは全国範囲に広がっていく。 (4) 以上の変化に拍車を掛けたのは、政府の無策や度重なる間違った政策対応である。国際穀物メジャー等の国際資本の大挙市場侵入を放任し、輸入GM大豆に絡む食品表示制度は未だ機能していない。長所でもない高油率の大豆品種の普及に大豆振興策の重点を置いたり、ここ数年の政府臨時大豆買付政策は国産大豆を倉庫に棚上げ、空いた市場を輸入大豆に空ける役目を果たすようなものである。
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