本研究は中国の大豆輸入急増問題に関して需給双方の背景と原因を分析し、今後の動向と国際市場への影響、並びに政府の取るべき対策を研究するものである。3年間の調査研究を通じて、次のようなことを明らかにした。 (1)豆腐等大豆加工食品の消費は微増に対して、搾油用関連の食用油と畜産物の家計・業務需要は急増してきた。後者の根底には強い潜在需要があるが、それを顕在化したのは急速な所得増加と都市・農村間の消費格差の縮小である。しかし需要の所得弾力性は大きく低下し、1人当たり消費量も日本に接近しているため、今後の需要拡大は大きくペースダウンと予想される。 (2)一方、国内の大豆生産は十数年前から南部地域で大きく減少し始めたが、単収向上と主産地での生産増がそれをカバーし全国の生産安定を維持できた。しかし近年、黒竜江等の主産地までが作付減少、その影響で全国の生産も大きく減少し始めた。原因はやはり収益性の低さにある。同問題は黒竜江省などの主産地に以前からもあったが、競合作物にとって積温不足という気候条件と競合作物の機械収穫の難しさに助けられて、大豆作の安定が保たれた。しかし収益格差が一層拡大し、機械技術も進歩した今、同地域での大豆作も急減したのである。 (3)今後、経済発展が続けば、中国の食用油と主要畜産物、並びに大豆の需要増加は大きくペースダウンするが、国内生産に関しては大豆、菜種とも賃金上昇等によりコスト競争力の一層低下が予想される。放置すれば、大豆、菜種の国内生産の急速な衰退は避けられないが、それを回避するには、政府による政策支援が欠かせない。大豆に関して、まず政府の政策重点を食用大豆の自給堅持と高蛋白質で非GM大豆の生産振興に据え置き、また具体策として、現行の臨時備蓄買付政策を改め、作付面積や販売量に応じた固定支払い策に切り替えるべきである。
|