本研究では、土地利用型農業の大規模経営を対象にして、経営管理機能を強化して経営発展を推進することができるよう、GIS(地理情報システム)ソフトウェア並びにGISと連結する経営情報システムを開発し、その利用実績に基づきながらGISの組み込みによる経営情報システムの高度化について、実証的に考究することを目的としている。そのために、平成22年度は次のような研究計画に沿って3つの課題を柱として取組みを行なった。 1.GISを利用する先進的農業経営に対する事例調査 2.GISによるソフトウェア及びGISを組み込んだ経営情報システムの開発 3.現地実証試験による普及定着条件の解明 「1.GISを利用する先進的農業経営に対する事例調査」では、北海道の農協組織の協力を得て、札幌市、帯広市、士幌町においてGISを利用した圃場管理システムを利用する先進事例調査を実施した。本調査には、研究協力者である中国農業科学院農業経済発展研究所の研究員1名を招聘し、同行させた。 「2.GISによるソフトウェア及びGISを組み込んだ経営情報システムの開発」では、研究代表者等の開発による「一筆圃場管理システム」に対し、生産資材台帳による試算計画機能の開発、作図機能の強化等について開発作業を進めた。また、本研究では、「一筆圃場管理システム」の中国農業への適応についても考察することとしており、農業経営管理に係わる財務管理と生産管理の情報連結を目標として、その基礎段階として中国の農企業向けの農業簿記会計システムを開発した。そして、この成果を学会にて個別研究報告すると共に学会誌に論文掲載した。 「3.現地実証試験による普及定着条件の解明」では、開発作業を進めた「一筆圃場管理システム」について、鳥取県、兵庫県の水田作経営の協力を得て、現地実証試験を実施し、ソフトウェアの現地適応性と開発方向について検討した。同じく、中国版農業簿記会計システムについても黒竜江省にて現地実証試験を実施した。
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