研究概要 |
本研究は水質保全など地域環境問題への対応を主な目標として発展してきた農業環境政策に地球温暖化防止への貢献を組み込むための方向性と政策手法を、農業環境政策の先進県の一つである滋賀県の実態をふまえて明らかにしようとするものである。本年度の研究成果は以下の4点である。 第1に、環境こだわり農業による水稲栽培を行う集落営農を複数回にわたり現地調査し,LCA(ライフサイクルアセスメント)のために必要なデータ収集を行った.調査対象とした集落営農の経営資料および聞き取り調査から,投入として種苗,肥料,農薬,エネルギー,産出として玄米,飼料用稲わらのインベントリデータを推計した.また,IPCCガイドラインにもとづき,調査対象の有機物管理および水管理方法を反映させたメタン排出係数を作成した. 第2に、これまで、過小評価されるといわれている閉鎖型チャンバー法で測定されてきた水田からのメタン放出量を、微気象学的方法(熱収支フラックス比法)による結果と比較検討した。微気象学的方法による測定値に対するチャンバー法による測定値の比は、水稲植被上の風速に大きく影響され、風速が大きい時には0.5程度となり、小さいときには1.0程度になることがわかった。 第3に、生協における取り組みを事例に、飼料米を給与して生産した鶏卵への消費者の評価と生協における飼料米給与鶏卵の持続可能性に関する調査研究を行った。消費者の評価は、「地場産」と関係する「安全」や「安心」に偏っていることが明らかとなった。 第4に、我が国の農業環境政策における地球温暖化防止策の展開過程を調査した。農業環境政策に地球温暖化防止という政策目標が明確に位置づけられたのは京都議定書第一約束期間に入った2008年であり、温暖化防止策においては農地土壌への炭素貯留が重視されていることが明らかになった。
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