研究概要 |
本年度の研究では,食品の卸売段階を中心に,食品廃棄物の削減と再資源化について,主体間の協調的対応を把握する目的で,卸売市場および小売業の実態調査と情報収集を行った。本年度において明らかにした点は,主として次の諸点である。(1)卸売市場から排出される食品廃棄物を,肥料ないし飼料に再資源化する動きが始まっているものの,原料調達と需要動向の点から,そこで生産されるリサイクル商品にも多様性が必要である。生産種類が単一のメニューしかないと,原料の調整面でも,販売先の確保の面でも困難性が増すといえる。(2)食品の消費段階に近づけば近づくほど,円滑な再資源化を確保するためには,原料である食品廃棄物を一定以上の規模で収集する必要がある。なぜなら,少量であると原料としての適正な組成とはならないからであり,小規模なプラントはこの点で運営がより困難と考えられる。 なお,当初計画していた実態調査のうち,台湾・台北市での調査は調査先都合により次年度へ延期した。その代替として,韓国ソウル市・可楽洞農産物卸売市場のヒアリングを実施した。そこから,取扱規模がきわめて大きい市場では,スーパーや量販店仕向けにとどまらず,一般小売店はもちろんのこと,購入当日に使い切る小規模食堂などへ需要の幅が広がり,それらへ販売する仲卸の経営が成立するため,残品がきわめて少なくなる傾向が見られる。日本の卸売市場の場合,スーパーや量販店対応のウェイトが高まり,それ以外の需要層へ向けた販売が,仲卸経営という面で困難であり,残品を増やしている側面がある。ソウル市の青果物卸売では,可楽洞農産物卸売市場が唯一の大型市場であり,取引が集中している。ここの場合には,取引が集中したことにより,規格品の低コスト流通のみならず,多様な需要層を引きつけることで,食品廃棄物として排出される可能性がある物品を商品として販売し得ているとみられる。
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