研究概要 |
本年は研究実施計画として,第1に卸売市場および小売店における食品廃棄物の発生抑制方策,第2に海外の生鮮食料品流通における食品廃棄物削減と再資源化の実態調査,第3にその他の情報収集活動を予定していた。 このうち,本年の研究活動の中心となったのは上記第2に係わる台湾調査である。前年度の韓国ソウル市・可楽洞農産物卸売市場に続いて,台北首都圏にある大規模卸売市場においてどのような廃棄物問題が生じており,いかに再資源化を図っているのかを実態調査とヒアリングから把握することを目的として,2011年11月に調査を実施した。 台北市の卸売市場は第1市場と第2市場に分かれるが,廃棄物の発生は両市場合計で有機物が年間約992トン,包装用品あるいは処理できない部類の無機物が593トンであった。このうち有機物の廃棄物については,物流を主因として発生している。例えば,台湾南部からの出荷品は,荷傷みを防ぐためにキャベツであれば外側の葉を残したまま出荷され,市場へ到着後に除去している。このような理由で発生する廃棄物に加え,それでも腐敗する出荷品が廃棄される有機物の大半であるとしている。そのため,出荷産地が北部へと移るに従って,廃棄物は減少するも台北市においても大型スーパーの進出が目立つものの,日本で指摘されたような残品の発生は深刻化していない。 食品リサイクル一般について,台北市政府へのヒアリングから,ごみ回収有料化に伴って市民による分別がかなり進んでいる。さらに,細分化された回収を支える,相対的に低賃金の労働市場が存在していることも,徹底した分別が可能となっている一因とみられる。また,大型レストランやチェーン化した小売店も養豚業者等との契約取引が行われてきたが,現在は品質検査のため政府を介して養豚業者に引き渡す仕組みに変わったとしている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で実態調査を行う4分野のうち,「産地における収穫量・出荷量変動と卸売価格の関係性に係わる経済分析」については早期に着手し,その結果を踏まえ,産地出荷団体に対して出荷量変動に伴う対応についての実態調査を実施する。 卸売市場を中心とした食品廃棄物発生の実態調査を継続しつつ,その他のエコフィードを扱う飼料会社等に対するヒアリングから,食品廃棄物の組み合わせ利用について把握する。
|