最終年となる本年度の研究では,第1に生産地と卸売市場間における食品廃棄物の発生とその調整,第2に卸売市場におけるリサイクル事業の課題,第3に,前年度に引き続き,台湾・台北市を対象に海外における卸売市場の廃棄物発生状況について調査および分析を実施した。 第1の課題について,これまで卸売市場段階での食品リサイクルが進展しない要因の一つは食品廃棄物の排出が量的にも,品種的にも不安定であることにあった。生鮮品であるため保存性を欠き,また保管コストの負担も困難であるから,エコフィードに適した原料の組み合わせを作り出すことが困難であった。しかし,細断型圧縮梱包技術の開発によって,比較的低コストで長期間の保存が必要となり,TMRセンターでの活用について展望が開けつつあることがわかった。本年度は,L社TMRセンター(群馬県),醤油製造業Y社(千葉県)の事例調査により現況を把握した。 第2の課題について,長野県A市場においてエコフィード製造を行うG社を対象に,卸売市場における食品リサイクルの課題を調査した。このケースでは,分別問題や食品廃棄物排出の不安定性についても課題を抱えていたが,それ以上にG社の処理料金よりも自治体の焼却処分の費用の方が下回っていることが,安定的な原料回収の面で大きな障害になっていた。 第3の課題について,台北市第一果菜批發市場の食品リサイクルについて,前年度に引き続き,実態と課題を調査分析した。同市場は排出される食品廃棄物の全量をリサイクルしているが,それが成立する背景には,食品廃棄物を容易には焼却させず,確実にリサイクルへと向かわせる仕組みを保持し,その費用についても社会全体での負担がなされていることなどが指摘できる。なお,前年度の成果を日本農業市場学会で口頭発表し,本年度の成果と合わせて論文を投稿中である。
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