本研究を通じて、企業の農業進出と農協・農業委員会等の地元機関の対応、加えて地域農者の対応について全国各地でのヒアリングをおこない、とりまとめた。そのなかで特徴的な事例を報告する。 ①企業には生協もくわえ、広島では生協・農協のコラボレーションの事例について調査した。生協は福祉等や組合員の要求に対する積極的対応として、みずから農業に進出したが、その際に地元とのコンフリクトはなく、協力関係が築かれた。 ②耕作放棄地対策を農業サイドだけではできかねる地域について建設業等の農進出の事例について調査した。そこでは企業は熱心だが、農協は無関心、農業委員会はルーチンワークで処理するなど、対応の不備がめだった。その背景には残る農業者が園芸作等の集約作物に取り組むために労力不足に陥っている現状がある。 ③企業の進出は②のように耕作放棄の発生など農業だけではカバーできない地域の事例が多いが、宮崎県のような園芸作地帯では、農業者は確保されているにもかかわらず、進んで企業進出を促している。その理由はIT産業等のノウハウを園芸作等の科学的管理に活かしたい、企業としてもIT技術を農業に応用したいというウインウインの関係があることが判明した。 ④東日本被災地では外食産業等が野菜工場に進出しているが、地元農業関係者との十分な調整なしでの一方的な進出は、後に自らの店舗以外にも販路確保の必要が生じた場合に大きな障害になっている。 ⑤農地法改正を通じる企業の農業進出は予想したほどはなばなしくは行われておらず、また懸念された問題が生じたケースもすくない。地域農業の最大の課題は、経営継承等による持続性確保であり、そのためには集落営農と新規就農者等の確保が最大の関心になっており、その点についても多くの事例を調査することができた。
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