研究概要 |
第1の赤土GAP概念の提案に関しては、日本生産者GAP協会の理論的蓄積のサーベイにより、適正農業管理(営農システム)と適正農業規範(経営における環境基準値)との両面からアプローチすべきという基本認識を得て、現地調査を行い、両者に関する実態と押さえるべきポイントについておよその感覚を得た。 第2の赤土GAPの具体化に関しては、ISOの要求事項の手法を適用して基準値を具体化するためには汚染源の明確化と定量化が必要であるという認識を得た。他方、(1)赤土等流出危険度マップによって圃場ごとに情報が把握されていること、(2)圃場ごとの流出量や削減量の測定は誤差が大きいが、流域総体としては、河川の河口部における流出の計測によって容易に測定しえることなどを確認できた。このことから環境支払いメニューの考案のためには、(3)個別圃場への対策には逆選択の可能性が捨てきれないこと,(4)「点源汚染における連帯責任メカニズム」による制度設計も検討すべきことが環境経済学の理論面から指摘できた。さらに、環境支払いメニュー考案のための実証的研究から論点となるのは,(1)支払の有無を決める「基準の形」,(2)「支援の手法」,(3)経済的な「支援額」であるが、「基準の形」については,「結果」基準と「プロセス」基準を適切に組み合わせた形になる。この基準は利害関係者が協議・調整の場で形成することになる。「支援の手法」については,複数のメニューから農家が選択できる制度であるとともに,規制と支援を結びつけた手法も有効である。支援対象を組織等とすることも考えられる。「支援額」は労働費も含めた費用でことが不可欠である一方で,赤土対策による収益の向上分についても考慮する必要がある、などの点である。 第3の協働原則の適用のアプローチについては、資金源をより効果的かつ継続的に確保するための仕組み構築の必要性に着目し、公的補助金のみに頼らず民間より継続的に獲得する手段として、コーズ・リレイテド・マーケティング(CRM)の応用を検討することとした。この分野の先行研究をレビューし、コーズである赤土流出防止のためにいかにCRMを成功させることができるか、その条件についての仮説を構築した。
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