現在、日本では国際化に対応した稲作農業のあり方が重要な課題となっている。そこで、米国・豪州・日本の大規模稲作経営体および大規模水田施設の現地調査を行い、日本において国際競争に耐えられるだけの本格的な低コスト大規模稲作農業を実現する可能性とその方策について、検討を行った。 調査の結果、米国では水田1枚が16haという超巨大区画水田で、専従者1名あたり100haを超える大規模経営を行っていること、一方、豪州では水田1枚1枚は5ha程度であり、経営規模も水稲で60~80ha/人にすぎず、それで長年農民は国際価格でのコメの販売を継続していることがわかった。 これらを分析した結果、日本においても、平野部水田地帯であれば、1)農業専業の担い手への土地集積(農林行政用語では農地の「利用集積」という)を推進し、2)利用集積されたままでは分散して小規模なままの水田群を担い手の耕作地として「集団化」し、3)集団化した水田群を1枚5ha以上の「巨大区画水田」として整備する、といった3つのステップを一気同時に行う水田整備事業(「圃場整備」という)を行って、大型農業機械の作業効率を大きく向上させることで、担い手経営で1人あたりの水田経営規模が60~80haという本格的な大規模稲作経営体の創出が可能になり、国際市場水準の低コスト稲作を実現できることが明らかになった。 また、水田の巨大区画化によって現在の標準的な圃場整備での通作道や小用排水路、給水栓・排水口等のほとんどが不要になるから、圃場整備の水田面積当たり建設事業費は大幅に削減されること、水路が減ることで草刈り等の維持管理労力も激減すること、給水栓・排水口が大きく減ることで水管理労力が減り、掛け流しがなくなり、用水ロスも少なくなり、節水的な水利用が期待されること、等が明らかになった。
|