研究概要 |
本研究では,有機農業および自然農法の中で活用されているカバークロップや雑草などの植生をマルチとして利用し,土壌炭素の増加と土壌生物相の多様性を確保する新しい機械化栽培システムの構築と評価を行った。 農作業管理が土壌炭素貯留量増加に及ぼす影響の定量的評価のために,耕地に有機物供給源として異なる種類の冬作カバークロップを作付し,後作にダイズを栽培する1年2作体系を取り上げ、プラウ耕,ロータリ耕,および不耕起条件下において,たい肥施用の有無を組み合わせた圃場を茨城大学農学部附属フィールドサイエンス教育研究センターに設置した。圃場試験の結果、カバークロップと不耕起栽培およびロータリ耕うんを組み合わせた栽培法で土壌炭素貯留が増加することが認められた。 また、Shirato et al.(2004)によって開発されたRothC改良モデルを用いて、茨城大学FSCでの研究サイトでのデータを活用して、モデルの適合度検定を行った。その結果、本モデルを活用して農法と土壌炭素貯留量との長期予測が可能であることが認められた。また、植生マルチ利用農法でのエネルギ消費削減を目指して、カバークロップ被覆条件下での不耕起播種機の消費動力を測定した。その結果、イネ科とマメ科のカバークロップの混播において不耕起播種機の作業動力を著しく減少することが可能であるなど、省エネルギ型のカバークロップと不耕起播種機の利用方法に関する知見を得た。 以上の結果から、土壌炭素を効率よく貯留しかつ作業動力エネルギを削減する農作業体系確立のための基礎データを得ることができた。
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