研究概要 |
近年,世界中の多くの流域で大雨や渇水という相反する水文気象事象が顕在化しつつある.世界的な人口・水需要増加の背景の下,水循環維持の重要性は以前にも増して高まりつつある.このような背景を踏まえ,本年度は申請時に提案された水循環モデルGARWCM(GPS-Aided Regional Water Cycle Model)の初期設計を計算機言語FORTRAN90の利用により行った.設計された水循環モデルは汎用性のあるタンクモデルに近い構造を有し,計算グリッド毎に水深が出力される.また,水深の空間変化から水流(水量)が出力できるようにコーディングを行った.また,併せてモデルの基盤となる,四国地域の土地利用や標高等のデータセットを,空間解像度1kmの高密度で作成・整備した.さらに,対象地域内の気象データとGPS可降水量の解析も行った.高知県で史上希にみるほどの洪水被害が観測された1998年に着目し,同年におけるGPS可降水量と降水量の関係について知見を得た.同県での共に無次元化された水蒸気密度と標高の間には,クリアーな指数関数的関係が見出された.また,洪水時のGPS可降水量は時間的に数日間増減が顕著でなく,連続した水蒸気の補給が大雨被害の原因になったことが示唆された.現地観測については,研究対象地域内の森林域の環境変化に伴う測定装置の不具合により生じたデータの欠測が生じたが,次年度,再度実施することによりデータを収集・補完した.その結果,特に上記GARWCMの開発に有用な,比較的急峻な地形の森林内土壌中の体積含水率の特徴的な時間変化特性が得られた.
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