本年度は,前2ヶ年間に得られた結果に基づき,開発を行ってきた水循環モデルを暫定版的に完成させた.(1)まず,モデル基盤については,DEM(Digital Elevation Model)データに関し,米国で整備された2種類のデータセット(GTOPO30・SRTM)の入力を可能にした.ただし,計算メッシュ(約1km間隔)に合わせ,それが自由に考慮できるような距離逆自乗法に基づくアルゴリズムを開発した.(2)次に,流域の土地利用情報の扱いについては,国土数値情報として公開されている土地利用メッシュを考慮可能なインターフェースを作成した.土地利用に応じて,計算メッシュ毎を再分類し,異なる粗度係数値を考慮可能とした.(3)また,流出モデルの水流の扱いについては,個々のメッシュで隣接する計算8メッシュのうち最急傾斜となるメッシュの方向で水流を追跡するような仕様を構成し,窪地の除去のアルゴリズムを開発した.(4)開発モデルは表面流と地中流の2層から構成され,前者はManning則,地中流はDarcy則に従うものと仮定し,物理過程をできる限り忠実に表現する分布型流出モデルとして構築した.また,後述の流域蒸発量を考慮できるように改良を施し,GPS情報との親和性を高めた.(5)さらに,国土地理院より取得されたGPSデータを用い,水循環機構に大きな役割を果たす,蒸発散と大雨について検討した.高知県において甚大な洪水被害が発生した1998年を対象に,GPS可降水量のマッピングを行うとともに,それに基づき蒸発散量のポテンシャル値を通年で計算することにより地図情報として整理した.さらに,流域の水循環の駆動力ともいえる大雨を対象に,その発生に関する指標をGPSデータより作成し検討を加えた.
|