研究課題/領域番号 |
22580289
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 史彦 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30284912)
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研究分担者 |
内野 敏剛 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70134393)
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キーワード | 電磁波殺菌 / 数値流体力学 / 空気調和 / 衛生管理 / バイオフィルム / 予測微生物学 / リスク評価 / シミュレーション |
研究概要 |
1.青果物の紫外線・赤外線照射による初発菌の制御と相乗殺菌効果の解明 (1)UV・IR照射装置の開発と相乗殺菌効果の解明Bacillus subtilis芽胞のUV(0.455mW/cm^2)・IR(1.87μW/cm^2/nm)照射殺菌実験を行った。この結果、IRにより50℃まで昇温した後、UVを60秒照射すると生菌数が4.1log低下した。IRによる昇温は20~50℃としたが、30℃昇温時が最も殺菌効果は低くなった。 (2)数値流体力学(CFD)アプローチによるUV・IR照射殺菌予測モデルの構築本年度は主にUV照射によるイチゴ果実の表面殺菌について研究を遂行した。UV透過性のあるイチゴトレイ(紫外線透過率0.76)に果実9個を詰め、上方150mm、下方131mmの両方向からのUV照射について検討した。照射モデルはDOモデルを用い、ランプ本数、ランプ間距離を変数とするUV照射シミュレーションを行った。イチゴ表面の照射分布を変動係数により評価した結果、上下各2本、ランプ間距離250-300mmでより均一な照射が可能であることを明らかにした。 2.マルチエージェントシステムによるバイオフィルム形成パターンの解析と除去バイオフィルム量の経時変化の予測およびバイオフィルム量データの解析を目的とした決定論的および確率論的シミュレーションモデルを構築した。本モデルは細胞外多糖類による基質の濃縮、バイオフィルム内部の増殖速度の低下、貧栄養下におけるバイオフィルム形成能の向上といったバイオフィルムの特性をよく反映した。 3.CFDによる生産・流通システムの空調衛生管理昨年までに開発したモデルに、積荷内を流体が通過する多孔質モデルを追加し、積荷内への汚染空気の流れを可視化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各項目とも基礎データの蓄積も順調であり、定式化も進んでいる。これらを基礎とするIR・UV殺菌モデルの開発、バイオフィルム形成パターンの解析モデルの開発、貯蔵庫内の浮遊菌の拡散予測モデルの開発とも順調に進んでおり、IR・UV殺菌については照射の最適条件も一部見出している。フードチェーンの衛生管理の高度化に資するデータ蓄積および解析法の開発が進んでいることから、進展度は高いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではアグリフードチェーンにおける微生物の成長・死滅、微生物が共生するバイオフィルム形成過程を予測する方法を確立し、微生物リスク評価を行うことを目的とするため、個々の要素技術について予測精度の向上に努めるとともに、要素技術の統合化を目指す。この統合化されたシステムによって、例えば、青果物の流通工程でひとつの菌に着目し、その増減を予測し、リスクを評価するなどの工夫も行う。
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