研究概要 |
数値解析的研究に関しては、昨年度の課題として計算の高速化が挙げられた。すなわち,昨年度作成した計算プログラムは有限差分法に基づいたものであるが、多くの計算時間を要していたために高速化に向けてアルゴリズムの変更などを検討する必要があった。そこで本年度は、移動現象論における基礎式である、連続の式、運動方程式、エネルギー方程式、対流拡散方程式を連立させ、これらを有限体積法により離散化し、SIMPLE(Semi-Implicit Method for Pressure Linked Equations)法を用いて数値解析プログラムを作成し、ソーラーポンド内の速度、温度、塩濃度を求めた。この際、昨年同様、従来の簡便な解析手法とは異なり、気象条件を考慮したり、ソーラーポンド内の塩水溶液の物性値を温度と濃度の変数とするなど、可能な限り実現象に近い条件にてシミュレーションを実施した。 実験的研究に関しては、実験データを継続して蓄積するため、引き続き、30cm(横)×30cm(縦)×10cm(高さ)のアクリル製立方体容器を用いて実験を実施した。さらに今年度は、ソーラーポンド内に連続した濃度勾配を付けて濃度成層させることができ、これを用いた実験も行った。また、昨年度の課題として挙げられた、ソーラーポンドの蓄熱性能の向上を目的とし、空気を封入した側壁を減圧できる実験装置を設計・製作したが、漏れの問題が生じた。この対策は次年度の課題である。 実験と数値解析を比較検討するにあたっては、下半分に濃度10wt%の塩水を、上半分には純水をそれぞれ入れソーラーポンド内部を移動現象論的観点から検討した。さらに実験にあたっては、下半分の塩水溶液が上半分の純水と混ざらないよう、密度測定などを常に行って監視しながら実験を遂行した。検討の結果、実験結果と計算結果は温度分布、濃度分布、そして温度の過渡応答に関して定性的に一致した。これらの成果は,学会にて発表を行った。
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