農業の担い手確保するためには農作業に不慣れな者も身体負担が少なく、安全で簡単に作業できる作業体系が必要であり、そのためにユニバーサルデザイン機械化体系の構築を目的としている。そこで本研究では、取扱性改良が特に遅れている背負型動力散布機を供試して、機体レイアウト等を見直し身体負担を軽減するとともに、女性、高齢者を含む使用者の体格、身体能力、感覚能力、認知能力等の範囲に対応するために人間工学手法を用いてモデルの試作・評価等から設計条件を解明し、背負型機械のUD設計指針を提案する。2012年度は、2011年度に試作したUD表示モデル58種類を使用して,照度3段階の環境下で、判読できる文字サイズを被験者42名に回答してもらった。その結果、色の組合せが白/黄赤、白/黄、黒/赤、黒/緑、青/黒が他の組合せより判読サイズが大きい。照度について、高ではサイズに差が小さいが、低・中では差が大きい。年齢について、高では判読できるサイズに差が小さいが低・中では60歳以上の方がより大きくなることを明らかにした。シャッター部のUD操作モデルについて、試作モデルを4名の被験者で試行したところ,操作ミスが減り,操作時間が3~6割短くなった。主観評価も良好な評価であった。UDフレームモデルは,重心は空の状態で25mm,燃料・肥料満量状態で5mm使用者に近づき,身体負担を減らせる可能性が見出された。さらに,市販機の肩バンド位置等を参考に,肩バンド及び補助肩バンドの位置を27箇所変えられる背負モデルを試作した。被験者11名にフィット感等20項目を7段階で主観評価してもらった。これより,肩バンドが高さ40cm,左右間隔10cm,補助肩バンドが高さ40~50cm,左右間隔10~20cmの位置がやや良好な評価であった。これらの知見は背負型機械のUD設計指針として活用可能を考えられた。
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