本年度は,前年度に試作したプロトタイプの防除管理支援Webシステムをもとに,効果的利用法や問題点を明らかにすることを目的に運用実験を実施した。実験は,Webシステムの運用手順に従い,はじめに,Webシステムにおける判別処理の学習のため,葉いもち,ごま葉枯病,紋枯病の3種9ステージの画像を供試し,色相Hと彩度Sを色特徴指標に用いて,既知病斑のHS分布特徴の機械学習について行った。Webサーバ上での画像解析と病状特徴モデルの作成にはOpenCVやRの関数を用いた。HS二次元分布を混合ガウス分布(GMM)と仮定してEMアルゴリズムを適用し確率密度関数のパラメータを推定しSVMの学習データとした。次に,ユーザの病状画像診断の精度を検討するため,交差検定法により得た病斑のGMMパラメータを算出してSVMのテストデータとし,predict関数でそれらの病斑が属するクラスの推定を行った。 その結果,正常葉のHSを基準にした場合,2値化と病斑領域の自動抽出は約7割の性能であった。病斑のHS分布には病気の種類やステージで特徴の違いが見られた。既知画像の判別処理では,病斑のHS分布の学習データ個数を一定に揃え,クラスタ数を1~4個として学習させた結果GMMは約8割弱で有効であった。さらに,テスト病斑の判定は,異種病気については概ね良好であったが,同種病気のステージ間では6割程度の性能に止まることが分かった。なお,各モバイル機器とも,接続や画像送信などの通信状況は良好であったものの,ユーザ側からリモートデスクトップ操作によりサーバ上で画像処理を行った際に,モバイル画面表示の拡大や入力操作に手間取る場合が依然として見られた。また,Webサーバでの判別処理等はスムーズに行われたが,各処理作業の連携に難が見られた。今後判別性能の向上とともに,それらの点についてさらに改善が必要である。
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