研究概要 |
消費者が青果物を購入する動機として「鮮度の良さ」は最も重要なファクターであり,流通・小売業においては常に鮮度を意識した取り扱いを心がける必要がある。しかしながら,鮮度は色やしおれ具合等の主観的判断に委ねられており,これを客観的かつ定量的に示す新規な指標の開発が求められていた。これまでに我々は,青果物に含有する脂質成分の過酸化度は青果物が遭遇した積算温度と強い正の相関があり,鮮度の定量的指標となり得ることを示した。流通現場での適用にあたっては,これを迅速・非破壊的に測定できる技術にまで高める必要があるが,本研究では分光学的手法による解決を目指した。本年度は,収穫直後のエダマメ'さやむすめ'および'錦秋'を入手し,20℃で貯蔵し適宜サンプリングした。鞘部について凍結乾燥し,粉状にした試料をBligh-Dyer法により脂質成分を抽出した。窒素にて流気乾固しクロロホルムにて再定容した抽出液について,紫外可視分光光度計によって190nmから1100nmの範囲で吸光度を測定した。得られた吸光スペクトルについて,紫外可視近赤外短波長領域のスペクトルデータを用いた主成分分析を行った結果,第1主成分スコア値が品種毎に異なることが示された。また,積算温度の増加に伴い第3主成分スコア値が増大する傾向が認められた。第1主成分においては300,430,670nmのバンド帯が,第3主成分においては350,410,670nmのバンド帯がスコア算出に大きく寄与していた。一方,近赤外短波長領域のみのスペクトルデータを用いた解析の結果,積算温度の増大に伴って,第1主成分スコア値が増大する傾向が認められると共に,品種毎にその傾向がグループ化されることが示された。以上の結果から,紫外可視近赤外領域の吸光度測定によって,非破壊的に青果物中の脂質成分の過酸化度を推定できる可能性が示された。
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