研究課題/領域番号 |
22580296
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中野 浩平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20303513)
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研究分担者 |
黒木 信一郎 神戸大学, 大学院・農学研究科, 助教 (00420505)
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キーワード | 鮮度 / 脂質過酸化 / ケモメトリックス |
研究概要 |
ホウレンソウ葉を対象に、低酸素環境が鮮度評価の指標となる生体膜脂質の過酸化に対して与える影響について検討すると共に、ホウレンソウ葉の近赤外スペクトルを用いた過酸化脂質のマロンジアルデヒド(MDA)当量の検量モデルの構築により、非破壊鮮度評価技術開発の可能性を検証した。さらに、コマツナ、ブロッコリー、ニンジンを対象に、測定部位の違いが脂質過酸化を指標とした鮮度評価値に与える影響についても検討した。研究の結果、貯蔵酸素濃度4.74%区において、ホウレンソウのMDAの変化量は有意に小さくなり、低酸素貯蔵により生体膜脂質の過酸化が抑制されることを明らかにした。また、近赤外スペクトルを用いたMDA当量の検量モデルを検討したところ、可視近赤外領域を用いた検量モデルにおいて、決定係数R^2-0.63、RMSECV=26.7nmol gDW^<-1>、近赤外領域を用いた検量モデルにおいて、R^2=0.57、RMSECV=29.0nmol gDW^<-1>の精度の検量線が作成できた。検量モデル構築の際に算出された回帰ベクトルと、SNV処理した平均スペクトル、相関スペクトルを比較した結果、680-720nm、830-874nm付近の波長領域は、MDA当量との相関が認められ(|r|>0.5)、検量モデルの構築に有用であることが分かった。また、クロロフィル濃度の変化はMDA当量の推定には直接的に関与しないことが示された。以上から、低酸素環境は生体膜脂質の過酸化を抑制すると共に、可視近赤外拡散反射スペクトルを用いたMDA当量の検量モデルの構築により、ホウレンソウ葉の非破壊鮮度評価の可能性を示した。また、化学分析による脂質過酸化率による鮮度評価精度は測定部位によって異なり、特にコマツナでは葉上端部、ブロッコリーでは花蕾部、ニンジンでは果皮部において精度が向上することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホウレンソウ葉を対象に、脂質抽出液、凍結乾燥試料、および青果物個体といった、組織構造の複雑さの程度が異なる系における脂質過酸化レベルの非破壊測定法を開発しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
広範な青果物品目を対象に研究を推進することによって、脂質過酸化率の非破壊モニタリング技術を新規な鮮度評価法として多種多様な青果物に対して汎用的に利用できるかどうかを検討する必要がある。また同時に、脂質過酸化レベルは部位ごとに異なることが、本研究により初めて明らかにされたことを鑑み、鮮度の評価・診断に最適な部位を検討し、青果物流通システムの高度化に貢献する技術とするところまで研究を進める必要がある。
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