研究概要 |
瀬戸内海島しょ部にあるかんきつ類の果樹園の多くは,急斜面に造られた「段々畑」が多く,こうした果樹園でのかんきつ類の栽培作業は危険な重労働となる.また,農業従事者の高齢化も進んでおり後継者不足も深刻である.そこで,本研究では,栽培作業の中で特に,果実の収穫作業を支援するロボットを開発することで,農業従事者の肉体的負担の軽減を図り,農業の未経験者が参入しやすくすることも目指す. 平成22年度において果樹園の実地調査を行い, 1.果樹園の最大斜度は約40度, 2.段々畑の各段の幅は約2m, 3.それぞれの果樹は収穫作業などを考慮して,最も低い枝は地表から約60cm程度, 4.作業でよく使用される収穫用のカゴは直径30cm,高さ約37cmの円筒形状のもの, 5.コンテナは果樹園からおおむね山麓までモノレールで運ばれるが,モノレールに乗せられたコンテナ上部の高さは70cm程度, 6.コンテナに果実を入れた場合の質量は30kg程度, 7.もっとも離れた果樹とモノレールとの間は30m程度.という結果を得た. 以上の調査結果から平成23年度は, 1.ロボットの全幅は最大1m(各段の約半分の幅), 2.質量は最大30kg(コンテナと同程度), 3.走行中のロボットの全高は60cm以下,という仕様を策定し,ロボットの設計・試作を行った. その結果,全長640mm,全幅812mm,全高510mm,制御回路,電池などを含まない質量25kg,走行部にはクローラを採用したロボットを試作し,試走を行った.その結果, 1.全幅812mmでは,果樹と接触する可能性が高いため,より小さくする必要があること, 2.質量をより軽くすること, 3.果樹園の地面は草の生えていることもあり,より走行部の機構についても検討が必要であること,がわかった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まででロボット本体の大まかな構造および仕様が決定できたため,本年度は人による操作に限定されるもののロボット本体の構造を決定し,制御用の電気回路・充電池などの設置を考慮したロボットの設計・製作を行う.ただし,実際の果樹園では,雨天での作業など防水についても考慮する必要があり,これらの点については,モータ駆動のため,防水性を持たせた構造について,検討しその効果などについても検証したい.
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