マウス筋芽細胞株C2C12は20% FBSを含むDMEMで維持・増殖させ、2% ウマ血清を含むDMEMで培養を行うことで筋分化を誘導した。C2C12株にpcDNA3.1にサブクローニングされたTAp73並びにΔNp73をトランスフェクションした後に、ネオマイシン耐性の安定発現C2C12株を作出した。対照として、pcDNA3.1のみをトランスフェクションしたネオマイシン耐性C2C12株も合わせて作出した。これらの細胞株を持続性アスコルビン酸存在下で長期培養した際に形成される細胞間のマトリックス構造の特性について、定量的PCR解析、電子顕微鏡並びに抗XII型コラーゲン抗体を用いたレーザー顕微鏡解析を行った。 その結果、導入遺伝子の安定発現C2C12株の長期培養系において、pcDNA3.1単独およびTAp73安定発現株と比較して、ΔNp73安定発現株において、細胞間コラーゲン線維が太くなり、同時にXII型コラーゲンの蓄積が認められた。定量的PCRにより様々な分化形質発現について検討したところ、ΔNp73安定発現株では筋分化形質の発現が抑制されるとともに腱分化形質であるテノモデュリン、XII型コラーゲン、fibulin-5発現の強い上昇を認めた。一方、TAp73安定発現株ではMyoD1やトロポニン等の筋分化形質の発現が上昇した。 以上の結果より、ΔNp73安定発現C2C12株では筋分化が抑制され、腱への分化誘導が促進されることを見いだした。筋細胞の分化過程におけるマトリックス制御にはp53ファミリーが関与するメカニズムが存在し、筋間結合組織の性状に寄与している可能性が示された。
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