本研究は、母ドリ卵黄へのIgY取り込みを担う新規な「IgY受容体」を同定することを目的とする。本年度は、独自に作出した組換え型IgY-Fcを使って、母ドリの卵胞組織から候補受容体を抽出することを目指した。得られた結果の概要は以下の通りであった。 ・ 雌ウズラ卵巣組織の顆粒膜細胞周辺の組織層から細胞膜を含むミクロソーム画分を調整した。 ・ その画分に組換え型IgY-Fcを加え、組換え型IgY-Fcと特異的に結合するタンパク質をプルダウン法により探索した。 ・ プルダウン後のタンパク質サンプルを電気泳動した所、IgY-Fcと結合したと推察される約180kDaのバンドを検出した。 ・ 卵黄への輸送能を欠いた組換え型IgY-Fcの変異体を用いてプルダウン法により同様な実験を実施した。 ・ 変異体を用いてプルダウンを行ったタンパク質サンプルを電気泳動した所、この変異体と結合したと推察される約180kDaのバンドを検出した。 ・ 卵黄輸送能を持つ正常なIgY-Fcと卵黄へ輸送されないIgY-Fcの変異体の両者で同サイズのバンドが検出されたことから、本実験により確認されたタンパク質は、母ドリ卵黄への抗体輸送を担うIgY受容体ではないと判断した。 ・ 本実験では、細胞膜の他に形質膜等の夾雑物を多く含むミクロソーム画分を実験に使用したことから、電気泳動時に多くの非特異的なバンドが検出された。 ・ 今後の解析には、卵胞組織から細胞膜のみを単離したサンプルの調整が必要と結論した。
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