研究概要 |
反すう動物のルーメンからは大量のメタンが排出されており、温暖化ガスの発生源として無視できない。本研究はルーメンに生息する水素生成微生物およびメタン生成菌と競合する水素利用細菌の多様性・動態・代謝活性を分子生態学的手法により把握し、各微生物群の相互作用を理解することを目的として行う。得られた情報から微生物の代謝を制御手段の開発につなげ、ルーメンからのメタン排出抑制を実現することにある。本課題はその礎となるものである。本年度はヒツジおよびウシルーメン内容物中の水素生成微生物および水素利用微生物の多様性の解析を行った。ヒツジ4頭およびウシ2頭から採取したルーメン液から環境DNAを抽出した。それをテンプレートとして各種水素利用微生物および水素生成微生物に特異的なプライマーを用いて機能遺伝子(mcrA、fhs、frdA;以上水素利用微生物、hyd;水素生成微生物)断片を増幅し、クローンライブラリーを構築した。ウシおよびヒツジから得られたfhsおよびmcrAライブラリーの解析から、多様な配列が得られた。また、ウシとヒツジでは異なる種構成を持つと考えられた。fhsおよびmcrAとも未知配列が得られた。ヒツジルーメンのhydのライブラリーから既知のhyd配列と相同性の低い未知配列が多数得られた。これらの結果はルーメン内に多数の未知微生物が生息することを示す。ルーメン内のhyd配列の多様性について明らかにしたのは本研究が初めてである。ウシhyd,ウシおよびヒツジfrdAについては現在解析中である。
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