反すう動物のルーメンからは大量のメタンが排出されており、温暖化ガスの発生源として無視できない。本研究はルーメンに生息する水素生成微生物およびメタン生成菌と競合する水素利用細菌の多様性・動態・代謝活性を分子生態学的手法により把握し、各微生物群の相互作用を理解することを目的として行う。得られた情報から微生物の代謝を制御手段の開発につなげ、ルーメンからのメタン排出抑制を実現することにある。本課題はそめ礎となるものである。本年度は、ルーメン液のインビトロ培養におけるメタン生成菌の動態を解析した。本試験では対照区、ポジティブコントロールとしてメタン生成阻害剤であるプロモエタンスルホン酸(BES)添加区、メタン生成抑制効果が報告されている米ヌカ添加区を設け、インビトロ培養でメタン生成、短鎖脂肪酸濃度および組成、メタン生成菌数の定量を行った。BES添加区ではメタン生成は完全に抑制された。また、米ヌカを基質に対して10%の割合で添加したとき、メタン生成が抑制された。米ヌカの添加量が5%および15%ではメタン生成は抑制されなかった。短鎖脂肪酸濃度に処理区間の差はなかったが、10%米ヌカ添加区ではプロピオン酸割合の減少と酪酸割合の増加が観察された。10%米ヌカ添加区におけるメタン生成菌数は対照区に比べて2/3に減少した(p<0.05)。BES添加区においてもメタン生成菌数は1/2に減少したが(p<0.05)。どちらの処理区においてもメタン生成菌数が大きく減少することはなかった。
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