研究概要 |
成熟ウサギの飼料タンパク質(窒素)利用効率に及ぼす異なる難消化性糖質(フラクトオリゴ糖(FOS),D-マンニトール,ペクチン)の影響を調べるために,食糞を許可あるいは阻止したウサギに難消化性糖質を添加した飼料を与えて,飼料成分の消化率,糞や尿中に排泄される窒素量を測定した。その結果,食糞を許可したウサギでは,フラクトオリゴ糖やマンニトールの飼料への添加によって,尿中窒素排泄量が有意に減少し,摂取窒素量に対する体内窒素保持量の割合(窒素蓄積率)が増加することが示された。しかしペクチンの飼料への添加では尿中窒素排泄量,窒素蓄積率に影響は見られず,糖質の種類によって効果が異なることも判明した。一方,食糞を阻止されると,フラクトオリゴ糖やマンニトールの窒素蓄積率改善効果は消失した。そのとき採取した盲腸糞中の窒素含量や,摂取窒素量に対する盲腸糞中窒素の割合は有意に増加していた。以上から,フラクトオリゴ糖やマンニトールはウサギの飼料タンパク質の利用効率を向上させることが示され,この作用は,これらの糖質が盲腸内微生物増殖を促すことにより,血中尿素を素材にして増殖した微生物体タンパク質のウサギによる摂取が増大したことによる可能性が示された(現在実証試験を行っている)。 本研究は,難消化・発酵性糖質を利用して,ウサギの飼料中窒素の利用性を向上させ,草類からの動物性タンパク質生産を,効率よく達成するための理論の構築とその応用をめざしている.上述のように,これまでにフラクトオリゴ糖やマンニトールには飼料窒素利用性改善効果があり,その効果発現メカニズムは,ウサギの特徴的な栄養摂取戦略である盲腸内容物の摂取(食糞)が関係することを明らかにすることができ,所期の成果が得られている。これらの成果は,効率的なウサギ生産技術創出への寄与だけではなく,環境に対する窒素負荷の軽減につながる点でも意義は大きい。
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